エステルについて(より詳しく)


エステル
 エステルは戦争によって、より高性能なエンジンが登場したときに開発された潤滑油です。
 エステルは植物の脂肪酸をアルコールで合成します。これがモノ・エステルで歴史的にはプロペラ、ピストンエンジンからジェットエンジンに移行したときに作られました。これがダイ・エステル、コンプレックス・エステル、ポリオールエステルと進化したのです。
 エンジンオイル用には、2サイクル用としてはポリオールエステルが主流で、分子が700位でSAE粘度は50番のものです。これはレース専用です。
 一般バイクなどには100%エステルは無理です。4サイクル用でも100%エステルは一般車には無理があります。前にも説明したようにオイルシールが膨潤するからです。
 そこでPAOを混合し、オイルシールの問題を解決し、さらに理想の粘度特性や一般車でもエステル効果が得られるようにするのです。つまり、燃費の向上、鋭い吹けあがり、低音性などが得られ、またロングランに使えるのです。
 エステルはメーカーとか粘性などの違いで何千種にもなりますが、一般には使えるものとしては2、3種で、粘性分類でも10種類位ではないかと思います。又、作動油とかギヤオイル等を加えると50種類くらいでしょうか。
 次にギヤオイルですが、マルチギヤでは75W−80とか75W−90、スバルなどFF車には一般的に低粘度のものが推奨されています。これはシフトフィーリングがよくなるからです。
 スポーツ車にはLSDがついていますし、またイニシャルをかなり掛けたりします。(11kg)この時の特性が大事なのです。またロングランに使えることが要求されます。
 フィーリングは粘度で決まります。エステルベースだと添加剤が限定されて思うような要求値のギヤオイルが出来ません。これはエステル用の添加剤がほとんど作られていないからです。このオイルはATFと同じ特性が要求されますが、添加剤で決まるのです。
 滑らせながらトルクを伝えるという矛盾した役割を担っているのです。その点、鉱物油ベースだと思い通りのギヤオイルが作れます。粘度の高いオイルは、スムーズな加速は無理です。85W−140はそうなるでしょう。トルセンでこの粘度油がイニシャルが上がる事はありません。特性が大事なのです。
 特性とは滑りながら大きなトルクをスムーズに伝えることです。スティック(引っかかる)&スリップ(滑る)を起こさないことです。オイルは滑るようでも引っ掛かるのです。この引っ掛かりをなくしながらトルクを伝えなければなりません。
 これが素材ではエステルであり、又、添加剤なのです。
 エステルは高価だから利益追求の為、あまり使われません。添加剤よりも高価なものもあります。
 C社のものは100%合成油といってもエステルではなくPAOです。これではフィーリングは鉱物油とまったく変わりません。ですから合成油と表示する場合、一歩間違えるとサギにもなりかねません。
 純正オイルクラスを使用していて、交換した時点でフィーリングが変わらないエステルベース油はありません。びっくりするほど体感できるはずです。